さすらいのおいらが今日も行く。 strongbow is walking around there.

2010年1月7日木曜日

Act 【俺的文学定義集】

A major division in the action of a play. すなわち劇芝居における主たる区切りとしての幕A Glossary of Literary Terms 6th edition. M.H.Abrams. 1993. Harcourt Brace Jovanovich. p.2


 エリザベス朝期イングランドの劇作家らがローマ古典劇の5分割アクツ(幕)を摸したのが始まりだとか。ちなみに手元の研究社『新英和中辞典第七版』は、「 演劇における幕、あるいは短時間の個々の行為」と記す。act、 acter、 actressって活用的記憶法は置いておいて、このact派生の単語は前述の辞書だけで40以上もあるのですよ。ちなみに語源はラテン語actusもしくはagereである。蛇足。
 19世紀末には、チェーホフやイプセンのような四幕構造の劇が流行。現代のミュージカルではない劇では、3幕構造が一般的らしい。
 幕はシーンという小分割に分けられ、現代劇では場所・時間の連続などの変化を持たない場合が多い。今の舞台前迫持、プロセニアムアーチでは、カーテンが下りることでシーンごとの中継が図られることも。
 さて、なんぞ幕のことが文学用語集で取りざたされるのかといえば、それはやっぱり英文学、ひいては西欧文学の伝統が劇に依拠していることからであると思われる。さらにいえば、劇・戯曲と言うジャンルが立派にひとつの思想として成立していたり。とりあえず英文学語るのにシェイクスピアやマーロウを無視するようなレベルの人はいないと思うんだけれど、それほどに劇っていうのは重要な里程標なのであって、日本でも古の平家物語をはじめ、歌舞伎や浄瑠璃が近代文学表現の礎となったことを考えれば自然。最近、ビックコミックスピリッツでもシェイクスピアの物語@ハロルド作石が連載され始めた。この前名前が出たトム・ストッパード脚本の以下の映画は、おいらが学部時代にとっても心酔して中古VHSを買っちまったくらいなんだZE。



 まぁなんでかって言うと、つまりこの作品でストッパードは、のちのシェイクスピア作品に出てくる男装だとか、身分違いの恋だとか、はたまた王侯貴族のいさかいだとか、そういうエッセンスが若きシェイクスピアの熱い恋愛体験に基づくものなんだよ、というのを表現してしまっているのであって、それが劇中劇と重なっていかにも真実味を帯びてしまうという。この映画の素晴らしいところはそこで、単に衣装でアカデミー賞を取った点のみをほめてはいけない。

 閑話休題。とりあえず幕というのはある意味ひとつの物語の結実。その幕の中にどれだけのドラマツルギーを織り込めるかが、劇作家の腕の見せ所なのであって、本当に感激させられる観劇っていうのは鳥肌もの。おいらの経験では、野村萬斎・蜷川幸雄の『オイディプス王』がテレビ画面越しでもそうとう感動した。うむ。

まとめ:幕すなわち行為の集成からなる小宇宙遊戯。

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