さすらいのおいらが今日も行く。 strongbow is walking around there.

2009年12月8日火曜日

動物虐待を訴えることの難しさ

http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-12822220091208

「ネズミを殺して調理した出演者2人を、動物虐待の罪で起訴した。」ということだけれど、まぁ 英王立動物虐待防止協会(RSPCA)からの苦情を受けた当局の手による訴えであるということなので合点がいったりいかなかったり。だってこちらの記事で示されている通り、件の組織は「動物愛護に名を借りた人権侵害集団」という、「佐幕に名を借りた人切り集団」というどこかの近代警察組織に似た感じがするのだよなぁ。
http://www.bbc.co.uk/insideout/content/articles/2008/11/07/south_east_rspca_s14_w9_feature.shtml
本国動物愛護法においては、以下の規定がある。

第六章 罰則

第四十四条  愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2  愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行つた者は、五十万円以下の罰金に処する。
3  愛護動物を遺棄した者は、五十万円以下の罰金に処する。
4  前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一  牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二  前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの
 
さて、件の事件の経緯がどうであるか、少し調べる必要があるだろう。
 
http://www.telegraph.co.uk/culture/tvandradio/6748741/Im-a-Celebrity-producers-escape-animal-cruelty-prosecution.html
 
以下引用。© Copyright of Telegraph Media Group Limited 2009
 
Charges are being brought against winner Gino D'Acampo and fellow contestant Stuart Manning after the chef apparently killed and butchered a rat to add meat to a meal.

起訴されたのはシリーズの勝者ジーノ・ダカンポと、その仲間ステュアート・マニング。ネズミを殺し、その肉を食事に入れたというのがその理由だ。

During the series the contestants were divided into two groups, one of which was in ''exile'' with meagre rations.
シリーズ中、競争者は二つのグループに分けられ、片方は満足な食料を与えられず「追放」される。

As the celebrities became concerned that they would lack the energy to complete physical challenges, D'Acampo, 33, decided to take matters into his own hands.
出演セレブらは、肉体面での競争に必要な栄養分の欠如に悩まされる。ダカンポ(33歳)は、打開策を講じた。

He said in the show's video diary room the Bush Telegraph: ''It's not done by choice but it's done because we need it. We need some kind of protein, we need some kind of flavour.
ブッシュ・テレグラフ内のヴィデオ日記中で、「好きでやるんじゃない。必要だからやるんだ。タンパク質が必要だし、味だって求めたい」と彼は述べた。

''I saw one of these rats running around. I got a knife, I got its throat, I picked it up.''
「走り回るネズミを見て、ナイフを取って、喉を掻っ捌いて、料理したんだ。」

The group, including 30-year-old Manning, ate the rat and enjoyed the meal.
マニング(30歳)を含むグループはネズミを食べ、料理としてもその味を楽しんだという。

Fellow contestant George Hamilton spoke out in defence of his former camp-mates, saying ITV producers had given them permission to eat the rodent.
同じグループに参加していたジョージ・ハミルトンは、メンバー擁護のため、ITVのプロデューサーがネズミを食べる許可を与えていたと証言している。

 
これを日本で考えると、まずネズミが愛護動物に該当するか、ということになるが、これは上の法における「人が占有している動物で哺乳類…」という定義を満たすであろう。
この点、問題となるのは占有についてである。
民法上の占有開始は、ある人がある物を支配し、自己のためにする意思をもって状態そのものを開始したというところにある。そしてこの占有は、占有の権原から客観的に判断されるべきであるという解釈が一般的である。
証言を要約すると以下の通り。
 
・「走り回るネズミを見て、ナイフを取って、喉を掻っ捌いて、料理した」という点。
・ITVのプロデューサーがネズミを食べる許可を与えていた
 
さて、撮影がおそらくはTV局の実効的な所有ないし占有が及ぶ場所で行われ、その撮影の中で上下関係のもと、動物を殺して食べてもいいという許可が、占有の大本であるTV局から与えられていたという場合、件の行為は占有者の権利侵害に対する同意がある他、番組撮影上の正当業務行為という観点から、違法性が阻却されると考えることもできそうである。
この点、同法は「みだりに」愛護動物を殺すことを禁じているのであり、対象愛護動物所有者の同意が「みだり」という定義すなわち「正当な理由なく」あるいは「故なく」の理由を満たしていると言うことはできる。
しかし他方で、判例によればこれら行為の正当性は、「手段方法においても相当であり、全体としての法秩序の理念に反さない」(神戸簡判昭和50年2月20日)ことも求められる。
よって、ここから先の判断は、件のTV番組がどれほど社会的認知度を集めているのか、あるいはこの行為が行われた時点での公序良俗との均衡を考えてなされるだろう。
 
まぁ結論としては、「そこまでしてテレビ番組つくらなきゃいかんかねぇ」でおkだよな。
RSPCAはいろいろとこの手の番組とはもめていて、時には行き過ぎた内容を抑制するために行き過ぎた制裁を公的に求めていくことおもあるらしい。関連記事をすべて追っているわけではないけれど、まぁ両極端の社会事象があって揺り返しなどなんだかんだ経由してその中道に行きつくってのは清教徒革命以来の英国の伝統 だから仕方ないねというシニカルな見方ができなくもない。

ロビンソン・クルーソを現実に見たい人がいるとしても、それを公共の電波で娯楽にしていくということは、娯楽と倫理のバランスの問題なんであって、勝手に行き過ぎた番組を楽しみとして求めている間にヒステリックな「模範的」反論が起き、それに追従した議員らが規制法案を通し、社会が住みづらくなるって言う民主制の嫌な連鎖はなかなか断ち切ることができないらしい。人って罪よねぇ。ちなみに生類憐みの令がどうなったのかも併せて参照するに足る事例ではある。うむむ orz

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